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2005年01月11日

『三月のライオン』矢崎仁司

 PFF出身の面々の中にあって、矢崎仁司さんが監督していてる35ミリ作品と言えば、このカルト的人気を呼んだ『三月のライオン』です。

『三月のライオン』 矢崎仁司 1992

  『花を摘む少女と虫を殺す少女』という2000年の作品があるのですが、見ていません。すいません。

 兄と妹の物語なのですが、怪しい近親相姦の話ではなく、ただ耽美的なのとも少し違います。非常に危ういバランスで成り立っているラブロマンスで、似たものをすぐに思いつきません。朽ち果てたような高層アパートで、記憶喪失の兄と、その兄を愛し恋人のふりをする妹の物語が淡々と進んでいきます。
 「旧友Nくんと再会そしてベーグル」の時も書きましたが、恋愛と過去という二つの様式は深く結びついています。恋愛とは常にあり得ないものとの出会いであり、振り返って「あれは一体何だったのだろう」という形で語る時にこそ、その不可能性がもっとも明瞭に浮き彫りにされます。その渦中にあるものとしての恋愛とは、未だ十分に恋愛ではないとすら言えます。
 この作品の恋物語がグロテスクなまでに美しいのは、はじめから禁止されていたもの=インセスト・タブーが、既にないものとしての過去の中に、今、現出されているからです。ここで破られている禁止とは、単にインセスト・タブーということではなく、今ここにあるものとしては許されていない恋愛なるものを、生きられる「現実」としまう、ということなのです。
 但し、それは妹の作為がそのまま達成された、ということではなく、彼女が演出する「現実」とは、わたしたちの普通に言うところの「現実」、つまり想像的なものでしかありません。ですが、その作為の至らなさ、作為の作為であること自体が、測らずも真の現実をむき出しにしていくのです。
 この二重の越境こそが、二重否定の強い肯定となり、「あり得ないものとしての現実」を召還するに至っているのであり、それゆえに果てしなく虚構に満ちたこの物語ほど、リアリティに溢れる映画はないのです。

 こういう作品は韻文的なところがあって、散文と異なり、人生のある時期にバチッとハマらないとなかなか楽しめないところがあると思います。二十歳前くらいの子に非常に見てもらいたいです。
 この映画に浸れる若者は、きっと普通の社会人にはなれないでしょうけれど(笑)。


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Comments

出会い系の時の話よみましたぁ♪
おもしろかったよん☆彡

Posted by: よしみ at 2005年01月12日 11:47
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