2005年03月10日
益するところも大きい調査なのでしょうが、読む側の受け止め方如何によっては非常に危険な要素があるように思います。
STDと性行動 相手の数や金銭授受と相関?
MedWaveにこんな記事がありました。
過去1年間の性的パートナーの人数に比例してリスクが高まる、不定期の性的パートナーあるいは金銭を介した性的パートナーとのセックス経験がある−−。これは、都市部の性感染症(STD)専門クリニックを受診した男性患者の特徴の一端を表している。一般男性と比較した、京都大学大学院医学研究科の本間隆之氏らの研究で明らかになったものだ(昨年の日本エイズ学会で発表)。「STDに罹りやすい集団の特徴を把握」するために行われた疫学的調査のようですが、STD受診男性と一般男性で比較した項目は「年齢、学歴、職の有無、初交年齢、過去1年間の相手の数、不定期の相手とのセックスの経験、金銭を介した相手とのセックスの経験、HIV・エイズに関する知識、最後のセックスの時のコンドームの使用状況」となっています。
益するところも大きい調査なのでしょうが、読む側の受け止め方如何によっては非常に危険な要素があるように思います。
コンドーム使用の有無については、当然ながら感染防止の効果が証明されています。しかし性交の回数や相手の数、金銭授受の有無などといったことは、感染との間に直接的な論理的関係があるわけではありません。
もちろん、以下に見る通り、調べてみれば有意の関係が見出せることでしょう。しかしここには統計のトラップがあります。数字の上で「つながり」があるように見えたとしても、因果関係の有る無しとは一切関係ありません。
寝たきり老人と活発な老人を比較すれば、後者の方が交通事故に遭う確率が高いことでしょう。統計をとれば間違いなく「有意な関係」が見出せるはずです。しかし、寝たきりであるかどうかと交通事故の間に、因果と呼べるような関係があるわけではありません。
これを危険と言うのは、性行動の様態という「倫理」的側面が、あたかもSTDの可能性と関係があるかのように見せかけてしまう恐れがあるからです。STDと倫理観には何のつながりもありません。皮肉なことに、ウィルスは人間性など見ていないのです。
このような価値判断の領域と疾病を関係づける見方は、STD感染者、とりわけHIVポジティヴへの偏見を助長することにもなりかねません。研究者の意図はそんなところにはないでしょうが、数字を読むわたしたちの方には意識の高さが求められると思います。
ちなみに、調査結果の方は以下の通り。
1.若い人ほどSTDのリスクが高い。STDリスクをオッズ比でみると、55歳以上を1とすると、24歳以下のグループは5.2(95%信頼区間、1.7-16.1)、25〜34歳では4.0(95%信頼区間、1.5-11.0)、35〜44歳では1.5(95%信頼区間、0.5-4.4)だった。
2.過去1年間の相手の数では、人数に比例してSTDのリスクが高い。1人の場合のリスクを1とすると、2〜3人では2.6(オッズ比、95%信頼区間、1.4-4.9)、4人以上だと4.1(オッズ比、95%信頼区間、1.8-9.2)に跳ね上がった。
3.不定期の相手とのセックスの経験がある。オッズ比は2.9(95%信頼区間、1.5-5.6)
4.金銭を介した相手とのセックスの経験がある。オッズ比は3.6(95%信頼区間、2.0-6.4)。
5.最後(一番最近)のセックス時にコンドームを使っていない。オッズ比は1.8(95%信頼区間、1.3-3.6)。
HIV検査 男女用
クラミジア・淋病検査 女性用
クラミジア・淋病検査 男性用
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