創薬治験ボランティア参加体験談
治験とは臨床試験のことで、新しい薬や治療法が実際に患者で使えるかどうかを人間の体で確認する試験です。
「時間のかかる治験のために海外で使える抗がん剤がなかなか承認されない」といった報道を目にされたこともあるのではないでしょうか。一方、ネット上などで「怪しいバイト」として治験参加が語られていることもあります。
実は参加したことあります。
その前に、治験について簡単にまとめておきます。
新薬の発売の為には、膨大な時間と資本投下が必要になります。基礎研究に2-3年、動物実験などの非臨床試験に3-5年が費やされた後、治験、すなわち人間を対象にした臨床試験が始まります。
治験は健康な人が対象の「第1相」、少数の患者対象の「第2相」、大規模に行う最終段階の「第3相」からなります(さらに発売後に「市販後臨床試験」という「第4相」が行われます)。この行程が最も時間を要し、国内では3-7年が一般的です。その後の厚生労働省による審査・承認でさらに1-2年が費やされ、ようやく市販にこぎつけるわけです。
海外で認可されている薬でも国内での発売には治験が必要になるため、「海外で承認されている抗がん剤が日本でなかなか使えない」といった問題が指摘されています。「米国で使われている抗がん剤のうち、3割は日本では未承認のために一般の診療で使えない」という報道もあります。
米国では、治験にかかる時間が日本の10分の1以下とも言われ、日本の製薬企業が海外で先行実施する例が増えています。厚労省は「日本人への使用は、海外の治験結果だけでは決められない」という基本姿勢を崩していないものの、欧米で治験済みの薬については国内治験を従来の半分以下の規模でも容認し、審査人員も増強するなど、審査の簡素化・迅速化も図っています。
2003年度には全国の大学病院などが参加する情報網「大規模治験ネットワーク」が設置され、2004年4月には医薬品医療機器総合機構がスタートしました。 審査センターと医薬品機構の業務全てと、医療機器センターの業務の一部を統合したもので、新しい医薬品・医療機器をいち早く提供し、安全に使えるようにすることが狙いです。
厚労省研究班による「治験情報ネット」では、白血病の治療に使う薬の臨床試験等に参加する患者が公募されています。また、医療現場において治験に携わる医師や創薬ボランティアをサポートし、 治験を円滑に進めるSMO(Site Management Organization)という事業も民間で広がっています。
治験への参加は「ボランティア」ですから報酬が出るわけではないのですが、「協力費」という名目で拘束料が支払われます。上の厚労省サイトを見ると、募集されているのは第2相以降の参加者で第1相については触れられていないのですが、こちらでは創薬ボランティアの募集が行われています。
わたしが参加したのは大分以前になってしまうのですが、一泊2万程度の「協力費」が出ました。
厳密な健康診断が行われるので、試験によってはかなり健康体でないとそもそも参加できません。事前説明も十分で、「ドイツ人は大丈夫だった」「犬に300mg打ったら死んだ」などのあまり嬉しくない情報も聞かされました。
参加中は病院のような治験施設に缶詰めで、長期治験の場合以外は一歩も外に出られません(現在は一般の病院での治験もかなり広まっています)。食事も決められたものだけで、投薬は当然ですが(プラシボ=偽薬の人もいる)、定期的な採血と蓄尿(全尿を採種し、薬がきちんと代謝されているか確かめる)には協力しないといけません。タバコは大丈夫でしたが酒・カフェインは禁止でした。消灯時間も決まっています。激しい運動もできません。長期治験で外出する場合も、決められたコースをお散歩するだけです。
ただしそれ以外は原則として何をやっていても自由なので、イイ若い者が日がな一日ゴロゴロしていることになります。なかなかに自堕落な風景です。一日中ゲームをしていたり、大量に置いてあるマンガを読みふけっている人もいます。芝居や音楽などでお金がない方がよく参加しています(わたしもその一人でしたが)。
短期的に投獄されているようなもので、わたしはせいぜい一週間程度でしたが、食事以外に切れ目のない生活はある意味キツいものがありました。
生活自体は理論的には健康なので、「『失われた時を求めて』を読破する!」などの目標を持って参加すれば、有意義に過ごすこともできると思います。
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