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2005年03月19日

ウェブ日記で解雇された耳鼻科研修医

 今年の一月に、ウェブで患者の悪口などを書いていた医師が解雇される、という事件がありました。

 水戸協同病院の耳鼻咽喉科担当の女性医師が、診療内容や手術の様子を公開し「頭悪い」「二度と来るな」などと中傷的な記述をしていたそうです。患者の一人が「自分のことではないか」と気付いたことから問題化、辞表提出にも関わらず論旨免職となったものです。医師の臨床研修制度が変わり、スーパーローテートという各科を回るジュニアレジデントが義務化したのですが、この医師はシニアレジデント、つまり義務ではない研修医として勤務していたようです。
 これについて、今月号の日経メディカルがコラムで取り上げていていました。

 おそらく一般の報道の大勢は「医師の人間性」といった論点か、ウェブやブログがきっかけで解雇される一連の事件の一つ、という見方でしょうが、医師向けの雑誌だけあって、どちらかというと「医師が身を守る」という視点でした。
 とにかく医療業界というところはITに疎いです。まずは「ここ数年、ブログと呼ばれるツールで日記を付けることが流行っている」といった説明から始まり、エキサイトブログのプロデューサ氏の「勢いで書き込むブログは、夜書くラブレターのようなもの。つい表現が過激になったりする」というコメントがひかれています。どのような形であれ、ウェブに出してしまったものは見つかる可能性から逃れることはできないわけで、書くなら慎重になれ、ということです。もっともです。
 また、ブログを公開している医師の、もしストレスのはけ口としてブログを利用するなら「徹底して匿名化をはかるべき」というコメントがあります。これも社会的地位のある方なら当然のことでしょう。
 件の医師のサイトについては、英国写真とF1通信さんに引用があります。こちらのブログでは「人間性に問題があったのではないか」とされていますが、個人的には必ずしもそう思いません。
 確かに表現は劣悪で、美意識は疑われます。ただ、人間なんて一皮剥いたらこの程度であって、どんな仕事をしている人でもこのくらいの愚痴は抱えているものなのではないでしょうか。対人業務ならなおさらです。普段「人当たりの良い人」ほど心の内には黒いものが貯まるのが自然というものです。
 それが殊更に取り上げられてしまうのは、医師という職業の特殊性故でしょう。しかし、医師もただの人間であって、生活のために労働しているだけです。倫理性に優れた聖人のような人が困った人を助けてくれているわけではないのです。医師に過剰な「人間性」を期待するような患者の態度こそ、パターナリズムを助長していると知るべきです。命を救い健康を保つのは医師の技術であって、技術はお金で買うものです。サービス産業に従事する者として、基本的な接遇は必要でしょうし、それすらできていない医師が多いのも事実ですが、これ以上のことをたかだか一人の労働者に期待してもムダというものです。
 この医師に欠けていたのは、人間性というより、「患者を守る」ことを通じて自分を守る、という大人の処世術の方でしょう。まぁ、お会いしたことがあるわけではないので、会ってみたら本当に外道だった、というオチもないとは言い切れませんが(笑)。


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Comments

くだんの件は、テキストそのものに問題があるというのではなくて、ブログのもつ公共性が見る人によって相対的に異なって映るために起こった問題だと思います。記事は、つくる側には「日記」でも、見る人には「ギャラリー」的存在ですから。

また、経済と倫理の相反については、アマルティア・センが「合理的な愚か者」の研究で和解の方法を発見し、少し前にノーベル賞をもらっています。

Posted by: Cubic 17 at 2005年03月20日 03:17
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