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2004年12月23日

良い歯医者さんの探し方

 誰でも良い歯医者さんにかかりたいと思うでしょうが、まずその「良い」の基準とはどこにあるのでしょう。痛くない歯医者さんでしょうか? 何度も通わないで済む歯医者さんでしょうか? 一人一人のニーズによって異なるでしょうし、実際、それぞれの要望にあった「良い」歯医者さんがいらっしゃると思います。しかしわたしでしたら、迷わず「リスク管理をしっかりしてくれる歯医者さん」「予防重視の歯医者さん」と答えます。
 今回ご紹介する『新版「歯科」本音の治療がわかる本−−歯科で損をしない「歯医者さん」の探し方・選び方』は、その予防歯科の分野における日本の第一人者熊谷崇先生の一般向け著書です。これから歯科にかかろうという方、際限のない削って詰める治療の繰り返しにうんざりされている方、デンタルケアに興味があるものの知識がなくて最初の一歩が踏み出せないでいる方、そして何よりお子様のいらっしゃる方に、自信をもってお薦めしたい一冊です。

 歯医者さんに限らず「良い」ものを選ぼうとしたら、それなりの知識をつけて望むべきなのは言うまでもありません。そう思って書店の医療コーナーなどに赴くと、実にたくさんの歯科本が並んでいます。そのほとんどが歯科医師による著書であり、医療消費者の立場としてはただの宣伝本なのか、それとも真実を伝えているのか、容易に判断がつきません。そんな歯科本の海の中で一冊だけ選べ、と言われた時に、迷わずプッシュしたいのがこの『歯科 本音の治療がわかる本』です。
 前職の関係などで、普通の人よりは多くの歯科の先生とお話する機会があり、「○○先生は有名だけれど腕はどうかね……」といった噂を聞くことがありましたが、熊谷先生のことだけは、まともな歯科医師の方なら皆さん口を揃えて賞賛されます。それくらい真摯に予防歯科の拡充に献身してこられた方なのです。

 予防というと、誰もが「歯磨き、砂糖を控える」と思いつきます。実際、歯磨きの習慣のある日本人は96.2%と世界的にもずば抜けていて、砂糖の消費量はスウェーデンの約半分です。ところが、成人の口腔状態は、先進国の中ではダントツに劣悪なのです。砂糖を控えたり歯磨きすることが悪なわけはありませんが、これ一辺倒の日本の虫歯予防運動は、虫歯の要因がわからなかった時代のものをそのまま引きずったものです。学校ではただ歯磨きの大切さだけが強調され(歯磨き自体はもちろん大切です)、そして早期発見早期治療の名の元に削って詰める治療が励行されてきました。
 わたしたちが子供の頃は「虫歯は絶対治らない、見つけたらすぐ削ってかぶせる」というのが当たり前のようでした。しかし被せものをしたからといって虫歯が治るわけではなく、削った歯はかえって虫歯にかかりやすくなります。これが歯科治療の悪循環の引き金となっていたのです。
 早期発見が大切なのは言うまでもありませんが、その後の早期治療とは、単に削るだけのものであってはなりません。長期的なリスク管理の観点から何が要因なのかを見極め、削るべきは削り、そうでない場合は適切な対処をする必要があります。また「早期治療」のための固くとがった短針による検査がかえって虫歯の原因を作っていたこともありました。
 熊谷先生は、いち早くこの方針の矛盾を指摘し、辛抱強く歯科医療の転換に取り組んで来られた方です。熊谷先生の地元山形県は、かつてとても虫歯の多い地域でした。1990年当時、山形県で乳歯に虫歯のある三歳児は実に78.5%(東京48.1%、スウェーデン8.0%)もいました。1986年に虫歯経験のない小学6年生はわずか10%しかいなかったのですが、それがわずか13年の間に55.6%にまで改善したのです。これはひとえに熊谷先生とその支持者の方の功績でしょう。
 その具体的内容については、ここでは詳解しません。非常に平易で誰にでも理解できる本ですから、是非手にとって確かめてみて下さい。狭い意味での予防歯科だけでなく、悪くなってしまった場合、やむを得ず抜歯に至った場合の処置について、また審美歯科や矯正歯科、顎関節症など、歯科全般について網羅的にやさしく解説されています。そのどれもが、実に公正で実直な内容であり、やたらに高価な治療に誘導したり、果てはパラノイアもどきの理論を振りかざすどこかの歯科本とは比較になりません。
 残念ながら、この本を手に入れても具体的な歯科医院リストが掲載されているわけではありません。「各市町村に最低一つずつ推奨できる歯科医院が揃ったら公表したいし、今もその準備を進めている」と先生も書かれています。ですが、良い歯医者さんを選ぶ時の最良のガイドになることはお約束できますし、特に歯科分野についてまだあまり知識のない方、歯医者さんは痛くなってから行くものだと思っている方には、これ以上の入門書は見当たりません。最初にも書きましたが、お子様のいらっしゃる方には、たとえご自身が歯科に興味がなくても無理矢理読ませたいほどです。

 最大のリスク要因である喫煙をやめられないわたしが言っても説得力がないかもしれませんが、立ち読みでも何でも是非一度パラパラとめくってもらえると嬉しいです。


『新版「歯科」本音の治療がわかる本−−歯科で損をしない「歯医者さん」の探し方・選び方』
熊谷崇 秋元秀俊 法研 1,785円

 ちなみに、ネット上で比較的公平かな?という口コミサイトとしては、おすすめの歯医者さんなどがあります。あくまでネット情報なので鵜呑みにしない方が良いですが、絞り込む参考にはなるかもしれません。

リンク:
医療費の負担を軽くする歯科検索サイト【歯科へ行こう!】

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Comments

メラトニンの検索でたどり着きました!はじめまして、国立の歯学部志望のはやといいます。メラトニンのことできてみたら、歯科やその他の医療ネタも多くありとても知的好奇心が刺激?されました!これからも見させてもらおうと思うので宜しくお願いします。

Posted by: はや at 2004年12月23日 01:15

こんにちは。受験生の段階でメラトニンを検索とは、渋いですね(笑)。将来が楽しみです。わたしはただの歯科フェチなので大したことはわかりませんが、立派な歯医者さんになって下さい! 魑魅魍魎が跋扈する医療業界の悪弊に染まることなく、謙虚な医療者に成長されることを期待しています。って、ババくさいセリフですいません。

Posted by: at 2004年12月24日 22:45
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